エンタがビタミン

writer : maki

【エンタがビタミン♪】『AKIRA』続編はやらない。大友克洋氏が制作の苦悩を明かす。

1988年に公開されたアニメ映画『AKIRA』が海外で高く評価され“ジャパニメーション”の先駆者と言われる大友克洋氏が、テレビ番組『ZIP!』に出演した。彼がメディアに登場することは珍しく、今回のインタビューでは『AKIRA』をはじめ、『スチームボーイ』そして新作『SHORT PEACE』での“手描き”へのこだわりなど貴重な話が聞かれた。そんな中で彼の口から「AKIRA2(アキラツー)はやらない」という衝撃的な発言があったのだ。

大友克洋氏の漫画『童夢』や『AKIRA』での緻密な描写は、当時から画期的なものだった。1988年に10億円の制作費をかけてアニメ化した『AKIRA』でもその特徴が活かされており、海外で高い評価を受ける。“ジャパニメーション”と呼ばれてその後の海外での日本アニメ人気に火をつけるのだ。

その大友氏が監督・脚本した新作『火要鎮』(ひのようじん)を含むオムニバス・アニメ映画『SHORT PEACE』の公開を前に、彼へのインタビューが19日の情報番組『ZIP!』のコーナー“SHOWBIZ BRAVO!”で放送された。

技術の進歩と共に最近はアニメ作品もCGが多用されているが、大友氏は手描きにこだわり続けているのだ。それは漫画『AKIRA』で1ページに1シーンを緻密に描き込んだ頃から揺るいでいない。アニメ映画『スチームボーイ』(2004年)では“蒸気”を手描きで表現した。「手でぼかしを入れたり、絵を3~4枚重ねてあの形にした」という。

新作『火要鎮』では“炎”の表現にこだわった。フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭に出品するということから、「世界に“日本”を分かりやすく発信するために江戸を舞台にした」作品だ。「炎や煙、火事というのが好きなので」と、大友氏は江戸の大火を絵巻物の“伴大納言絵巻”の炎を参考にしたことを明かしている。

そんな大友氏の手描きへのこだわりはスタッフ泣かせでもある。プロデューサーの土屋康昌氏は「大友さんはいろんなこだわりがある人ですが、自分で全て描いちゃうんです」と語る。

一般的にアニメ作品は監督がラフな“絵コンテ”を描き、それを基にしてスタッフが“原画”を作成して色などを加えて仕上げをする。ところが大友氏は「絵コンテを原画レベルで描き込んでくる」のだ。土屋氏は「下描きの完成度が高くて『これよりすごい絵をどうやって作るの?』とプレッシャーになる」と本音をこぼした。

『AKIRA』で成功を収めた大友氏だが、その『AKIRA』によってずっと辛い思いをしてきたという。土屋氏もそれについて「大友さんは酒の席でいつも『同じものは二度と作りたくない』と言っている」と証言するのだ。

「みんな『AKIRA2』をやって欲しいんでしょう。やらないけど」と大友氏は『AKIRA』の続編について可能性を否定した。彼は「あれ以来、ずっと下手な原画を直しているだけだった。仕事しているのか直しているのか分からない」と『AKIRA』の呪縛から抜けられなかった日々を明かし、「あんまり思い出したくもない…ふふふ」と笑った。

今では「辛いばっかりじゃ、しょうがない。描いていて楽しくないとしょうがない」と思い直した。『AKIRA』の続編を作る時間を費やすならば、新作へ挑戦したいと考えるようになったのである。

昨年の春に都内で開催された『大友克洋GENGA展』には、外国人のファンも含めて多くが来場した。『AKIRA』の原画も多数展示されており、「素晴らしい作品で、続編があったらぜひ見たい」という声も聞かれた。しかし大友氏は、そこに留まらず新しい挑戦を試みるのだ。

彼が描いた渾身の“炎”が堪能できる『火要鎮』を含む4作品からなるアニメ映画『SHORT PEACE』は、7月20日から全国で公開されている。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)