エンタがビタミン

writer : naomaru

【エンタがビタミン♪・番外編】2年前のあの日、ラジオの向こうで起きていた芸人たちの葛藤と願い。

2年前の3月11日、東日本大震災が発生した。停電になったところでは、普段はほこりをかぶっているラジオにみなが耳を傾けた。深夜ラジオといえば芸人たちの楽しいトークが聴けるものだが、あの未曾有の事態にラジオの向こうでは芸人たちが葛藤していたのだ。

東日本大震災が発生したのは金曜日。以降は地震関連情報のみの放送となった。そして週が明けて口を開いたのは、“ラジオの帝王”伊集院光であった。『JUNK 伊集院光 深夜の馬鹿力』が放送される時間帯でのことだ。

月曜日の深夜1時、このときは余震が頻発していたため地震関連の特別放送となり、伊集院は冒頭数分間だけの登場となった。彼は「個人的にしゃべることを仕事にしているので(ここでしゃべれないことに)葛藤がある」と正直な気持ちを語り出す。そしてリスナーからの「バカな話が聞きたい」という声に応えたいとしながらも、伊集院は「まじめなことを考えて悲しくなったり怖くなったときには、ビックリするくらいくだらないことを考えてください」と語りかけていた。日ごろの放送でも、ふと“生きること”や“死”の話など、飾らない等身大の発言を繰り返してきた伊集院らしい言葉だった。

翌日火曜日の爆笑問題の『JUNK 爆笑問題カーボーイ』も、冒頭数分間だけの放送となった。通常ならば日曜日の『サンデージャポン』と『爆笑問題の日曜サンデー』で司会を務める2人だが、ともに地震関連のニュースで中止だったため震災以降、初の登場となった。太田光は日ごろから問題発言が多いからか「生放送させてもらえない」と愚痴りながらも「避難所なんかで聴いてる人いるかね?」と声を掛け、「もうちょっとがんばって。一段落したら、私がみんなにおごりますんで。私のポケットマネーで」と彼らしい照れた様子でリスナーを励ましていた。

金曜日の『JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD』では、設楽統が「どうしようもない悲しみが突然やってきても、希望を捨てずに」と励まし、通常通り楽しい放送がしたいと心のうちを明かしたが、地震関連情報の必要性もあり冒頭数分間のみの放送となった。特別放送に変わる直前に、設楽は「裏でサンドウィッチマンがオールナイトニッポンやってるから聞きたい人はそっちを聞いてください」と、実際に気仙沼で被災していたサンドウィッチマンの裏番組を紹介するといった異例の発言をした。

また、土曜日の『オードリーのオールナイトニッポン』では、冒頭すぐに7分間に及ぶ新作の漫才を披露した。

誰もが経験したことのない未曾有の悲劇の中、“お笑い”という一見場違いな仕事をしている芸人たちが出したそれぞれの答え。2年経った今も、何が正しかったのか誰にも分からない。しかしあの時、国民が一丸となって被災した人々の心情を思ったことを忘れてはならない。被災地では、今なお2年前と変わらない悲劇と共に暮らしている人々がいる。
(TechinsightJapan編集部 佐々木直まる)