エンタがビタミン

writer : maki

【エンタがビタミン♪】倉本聰+さだまさし。『北の国から』の主題歌をわずか30分で作った2人の達人。

ドラマ『北の国から』の主題歌を手がけた歌手のさだまさしが、テレビ『嵐にしやがれ』の中で楽曲誕生までのいきさつを明かした。倉本聰監督と彼とのやりとりで、この名曲が生まれるのに要した時間は30分ほどだったという。

『北の国から~遥かなる大地より~』が正式な曲名である。今も名作として人気がある『北の国から』は、その舞台となった北海道富良野を一躍有名にした。ロケ地である麓郷の森は観光名所となり多くの人々が訪れている。

2012年となった今も、やはりその人気は健在だ。さだまさしが7月7日の『嵐にしやがれ』に登場して明かしたのは、ドラマ『北の国から』が撮影に入ったばかりの1981年頃の話だった。

倉本聰監督から「ギター持って来い」と呼ばれたさだは、まだ音楽も入っていない『北の国から』の1話と2話のビデオを見せてもらった。「どうだ?」と監督から感想を尋ねられて彼が「最高ですよ」と答えると、「お世辞言ってないか!?」と監督が念を押す。「いえ、最高です!」と答えるさだに監督は確信したように言った。「じゃあ、曲作れ。今作れ」と。

倉本聰監督とさだまさしが凄いのはここからである。ビデオがはじまると『列車の中のシーンで子供たちが映る。田中邦衛が“空知川だ”とつぶやく。富良野の前の小さな駅に着くと子供たちが暗がりから駆け出し、岩城滉一が“よくきたなお前ら~”と両手を広げて迎える』。そしてシーンは変わり『イグニッションキーを回すと美瑛の7色の花畑をトラックが横切る』、その瞬間に「はいっ! ここっ!」と監督が叫ぶのだ。

監督がこの一連の流れを「もう1回いくぞ!…“はい、ここ!”」と3度ほど繰り返したところで、「先生イントロは?」とさだが口を開いた。「短い方がいいな」と監督。「“よくきたなお前ら”あたりからでいいですか?」とさだが返すと「ああ、いいよ。じゃあもう1回いくぞ」と監督はビデオを繰り返す。

“よくきたなお前ら”からさだがギターでイントロを爪弾くと、「♪あ~あ~」とあのメロディーを口ずさんだ。「いいじゃないか! まさし! いいよ」と監督はまたビデオを「じゃあもう1回…」と再生する。さだのメロディーが少し進むと、「もうちょっと音程、上げたいね」。さらに歌うと、「いいね、もっと上がるか?」と監督。「いえ、もう下がります」とさだがあのメロディーを続けたのである。

こうして『北の国から~遥かなる大地より~』は30分ほどでできあがった。しかし、「歌詞をつけない選択は勇気がいった」とさだは証言している。これには倉本聰監督から「この曲には言葉はいらないですと言われた」という説があるが、今回の流れからすればはじめからスキャットで進んでいたようにも思われる。

ちょうどこの頃、さだまさしは映画『長江』の制作で利子を含むと30億を超える膨大な借金を抱えていた。当時はまだ28歳でそれほどの大仕事に踏み切ったことも凄いが、実は借金をする前に故郷の長崎に“詩島”という島を所有している。島自体は2千万円ほどでロッジが数千万円、海を汚さないように整備した浄化槽が5千万円だ。

長崎の“詩島”に中国の“長江”、そして北海道の“富良野”と彼に縁のあるところは広大だ。さだまさしは『関白宣言』のような歌の世界とは違い、スケールの大きなことが好きな男なのだ。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)