writer : yonashi

【ドラマの女王】好青年でもドS執事でもない。嵐・櫻井にピッタリなのは熱血男児だった! 『ブラックボード 第一夜』

去る4月5日~7日に三夜連続で放送された『ブラックボード~時代と戦った教師たち~』。時代の流れによりめまぐるしく変わっていく教育現場と、それぞれの時代を生きた3人の教師の物語が丁寧に描かれていた秀逸作品であった。

第一夜の軍国主義「未来」では戦中、戦後を生きた教師・白濱正平を嵐・櫻井翔が熱演した。戦後間もない日本で、白濱は戦争で右腕を失いながらも教師として復帰する。しかし、かつての教育と変わってしまった世界に戸惑い、戦争中に受け持った生徒たちの現状を知り、教師としての自信を失う。自分は生徒たちに何を教えていけばいいのか悩み、答えを見つけようとする。

主演の櫻井は最近バラエティなどで見かける七三ヘアもうなずける熱演ぶりだ。「大日本帝国万歳」と信じて疑わなかったあの時代を教育の現場から描いたこのドラマ。教科書では、戦後の日本は民主主義を掲げ、教育もそのように変わったと簡単に書かれているだけだ。しかし、教師もまた「お国のために」と信じ、敗戦により変わってしまった世界についていけず苦しんだ者がいたことに改めて気付かされた。

そして、そんな時代の流れに戸惑う白濱を櫻井は文字通り力強く演じていた。特に戦争中に教壇に立つ白濱は、普段の櫻井からは想像が出来ないほど、眼差しは力強く、口調は荒々しく、見ていて惹き付けられるものがあった。これぞかつての日本男児そのものであろう姿を表していた。これまでの彼のイメージを覆すものではあるが、演技としてはこのような役の方が向いているように思えた。それほど白濱という人物を自分のものにしていたのだ。

一つだけ残念だったのは、その勇ましい演技と相反する童顔だ。髪型や表情でカバーされてはいたが、ふと見せる安堵の表情など気が緩むと違和感があった。しかし、それもラストになると「あぁ櫻井君で正解だったな」と思わされるのだった。はじめはこの時代を櫻井が演じるのは若すぎではないかと思ったが、白濱はきっと戦争がなければ、普段の櫻井のイメージのような爽やかな青年だったのではないだろうか。そこを上手く演じきった櫻井に頭が下がるばかりだ。

櫻井の演技もさることながら、ストーリーの運びや他の登場人物のキャスティングも見事であった。戦後の日本の様子と登場人物それぞれの心情が丁寧に描かれているため、とても濃密なストーリーだ。だが分かりにくい表現もなく、話の中に入りこめる。教師のみではなく、時代背景の描写もしっかりしていた。キャスティングも未亡人となった兄嫁に宮沢りえをもってきたことには感服した。最近では木村多江をもってきそうな役どころだが、この時代を演じるには少し現代の不幸せのイメージが強過ぎる。その点でも宮沢のキャスティングはまさに絶妙だった。

どこを取っても抜かりなく作られた第一夜にこの時点で、続く第二夜以降の期待が高まると同時にこのままのクオリティで三夜まであるのか不安も覚えるほどであった。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)