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【異文化妊婦レポート in U.S.A】「morning sickness」とは名ばかり、一日中続く辛いつわりへの対処法は?

こんにちは。【イタすぎるセレブ達】ライター、アメリカ東海岸在住のブローン菜美です。現在妊娠8ヵ月、アメリカ人の夫と共に初めての妊娠生活を送っています。米国の妊娠・出産事情を「異文化ママ」の視点からレポートしていくコラム第2回は、つわり体験とその対処法についてお伝えします。

■辛いつわり、アメリカでの対処法は?

「つわり」は、英語で「morning sickness」。主に朝の空腹時にやってくることからこんな名前になっているようですが、私の場合は「一日中シックネス」とも言うべき恐ろしいつわりが、妊娠6週目頃から3ヵ月以上も続きました。昼夜問わずお腹のベビーが「食べ物をくれ~!」と要求する「食べづわり」で、食べるまでは猛烈な吐き気。そして食後も胸焼けや眠気に襲われます。また水やお茶がまずくて飲めなくなり、ある朝、猛烈なめまいと偏頭痛を伴う脱水症状を起こし、起き上がれなくなってしまいました。

その時に助けられた「命の水」は、日本にも再上陸を果たしたファストフード『ウェンディーズ』のレモネード。レモン汁とサトウキビ糖だけ、添加物なしと謳っているバケツのようなLサイズのドリンクを飲み干して、ようやく起き上がれるようになりました。

そこで産婦人科を受診したのですが、通っている病院では完全分業が進んでいて、妊娠12週を超えるまでは超音波診断技師と看護師のみが対応し、緊急事態以外、まだ医師の診察は受けられません。つわりについて看護師に泣きつくと「水分を吐かず飲めているなら、点滴や薬の投与は出来ない。」とのこと。

水も飲めないほどの吐き気を訴える妊婦には、「ゾフラン(Zofran)」などの吐き気止めが処方されます。ゾフランは抗がん剤治療を受けている患者さん向けに使われている薬だそうですが、アメリカでは広くつわりに処方されていて、かなり効くそうです。しかしかなり高額のため、医療保険が任意加入な上、保険ごとに保障額がかなり異なるアメリカでは、処方される側に注意が必要なようです。気分が悪い時に保険費用のことを気にしなければならないのは、何ともやりきれないものです。

そこで勧められた薬に頼らないつわりの民間療法は、 1)ショウガを割って匂いを嗅いだり、細かく切ってお湯やお茶に入れて飲む。 2)サルティン(塩ふり)・クラッカーや、パン、ご飯など、なるべく薄味のぼそぼそしたものを食べる。 3)食べ物を小分けにして食べる。 4)船酔い防止のリストバンド(“Sea-Band”という商品名で売られています)で、つぼを圧す、の4点。どれも試しましたが、一時的には収まるものの、すぐ効かなくなるものもあり一長一短でした。また、つわりの時に特に怖いのが脱水。ノンカフェインならどんな飲み物でもいいから、とにかく水分を摂ることが大事と言われました。

またアメリカで、妊婦と妊娠を希望する女性全てに摂取を勧められているのが、葉酸やカルシウム、鉄分などが入った総合ビタミン剤「prenatal vitamin」です。ドラッグストアなどで、様々なブランドのものが売られています。私の場合はこれを飲み下すことが出来ず、無理して飲むとさらに吐き気が増す、という有様。つわりで辛いのに「prenatal vitaminだけは、絶対に飲まないとだめ!」と、夫の家族からも言われてイライラすることしきり。後で考えれば、同じ成分が入っているグミ状のものなどを試してみれば良かったのですが、あの大きな錠剤を見るだけでイヤになってしまいました。

こうした妊婦向けビタミン剤の成分の一つ、葉酸はビタミンBの一種で、妊娠4~12週に摂取すると、胎児の無脳症や神経管閉鎖障害などの奇形の発症リスクを軽減するという研究結果が出ています。アメリカでは近年、妊婦向けに特に葉酸の摂取が呼びかけられていますが、日本ではこうしたサプリメントを「マスト」として飲まないとならないというのを、あまり聞いたことがありません。ほうれん草などの緑黄色野菜や豆類など、葉酸を自然に含んだ日本の食事を普通に摂っていれば、問題はないと言われているようです。

また、妊娠中に食べ物の嗜好が変わることを craving(はまること)といいますが、アメリカの妊婦さんは「ピクルスにケチャップをかけたもの」などにはまるケースが多いと聞きます。私の場合は白米、うどんや納豆パスタなどの和風パスタなど、日本食ばかりにクレービング。最もはまったのが、カツオ節と醤油をかけた白いご飯で、これをお茶碗に一杯かき込むと、不思議と楽になるのでした。

しかしこうした食材がまとめて手に入るアジア系スーパーまでは、車でハイウェイを約45分。そして値段も日本での価格の約2倍はします。外をちょっと歩けば美味しいお弁当が手に入るコンビニや、テイクアウトのお惣菜店などにあふれた日本が、これほど懐かしく思えたことはありませんでした。

また夜中に目が覚めては、アメリカでは容易に食べられない日本ならではのメニューがむしょうに食べたくなる私。ある晩は「クリームコロッケ」、ある晩は「CoCo壱番屋のカレー」、ある晩は「吉野家の牛丼」について、それらがどんなにおいしい食べ物なのかをせつせつと夜中、私に聞かされる夫。さぞかしいい迷惑だったことでしょう…。(つづく)
(TechinsightJapan編集部 ブローン菜美)