writer : maki

【ドラマの女王】“怪物くん”の二番煎じでは無かった。亀梨和也の主演で生まれ変わった『妖怪人間ベム』。

アニメを実写化したドラマ『妖怪人間ベム』が始まった。日テレの土曜ドラマでは『怪物くん』が昨年放送されて好評だった。今回はその『怪物くん』以上に実写化が難しいとの声が多かっただけに内容が注目されたが、良い意味で予想を裏切られることになりそうだ。

土曜ドラマ『怪物くん』は主演がジャニーズの人気グループ嵐の大野智であり、今回の『妖怪人間ベム』ではKAT-TUNの亀梨和也がベム役で主演を務める(原作では主演はベロとされているが)。アニメの実写版でジャニーズアイドルを主役に起用するという点で、今回の作品に対して正直なところ『二番煎じ』的なイメージを持っていたのだ。

原作アニメが、昭和40年代の感覚で作られたかなり強烈な内容だけにどう実写化するのかにも興味があったが、10月22日に放送された第1話『悪を倒し闇に隠れ生きる妖怪が今甦る! はやく人間になりたい』を見た限りでは、そんな思い込みは不要と思われた。

オープニングテーマでは、原作アニメを忠実に実写化したパロディ的な仕上がりで好感が持てた。ドラマでオープニングテーマに1コーラス分時間を割くのも最近では珍しい。その間にチャンネルを替えられるのを避けることで、テーマ曲や番組関係者のテロップを流すのはエンディングに持ってくるのが主流だ。本作はそれに耐え得る仕上がりのオープニングと言えるだろう。

原作では妖怪人間として生を受けたベム、ベラ、ベロの3人が悪の妖怪や怨霊を退治しながら物語が展開していくのだが、ドラマ版では第1話を見る限り犯罪を犯す人間が戦う対象となり、それに関係している謎の人物(柄本明)が悪役という設定のようだ。

亀梨和也が演じるベムは寡黙で優しい男だが、超人的(妖怪的?)な身体能力を持つ。彼はアクションシーンもジャニーズで鍛えているだけに迫力がある動きを見せていた。パワフルで威圧感や恐怖感さえ漂わせる原作のベムとは違った、亀梨和也オリジナルのベムを作り出しているのだ。

話題の鈴木福くんが演じるベロは、無邪気で子どもらしく何にでも関心を持つ為に事件に巻き込まれるきっかけを作ってしまう。原作どおりの設定を見事に演じているが、福くんは楽しい表情や悲しみの表現力が素晴らしく原作以上の役割を果たしているのではないか。

そんな中でベラを演じるは原作のベラを忠実に演じることを追求していることが伝わる。彼女の話し方や冷たい表情は原作のベラそのものなのである。原作を何度も見てベラの性格をモノにしないとあの演技はできないだろう。

ドラマ版が原作アニメと最も違うのが“恐怖感”が薄いことだ。まず、3人が妖怪人間の姿になった時が戦隊モノの怪人のような衣装なのである。また、今後はどう展開するか分からないが、敵となるのも人間なので恐ろしい怨霊は出てこないと思われる。原作をリアルに再現するとオドロオドロし過ぎて、土曜ドラマとしてふさわしくないことから敢えて恐怖感を抑えているようなのだ。

ベム達に関心を寄せる夏目刑事役の北村一輝とその一家も関わることで、3人と人間との接点が生まれる。彼らが徐々に人間と心を通わせながらある時は裏切られ、ある時は希望を見出す。そして、人間になる方法を探し出せるその日が来るのを見届けたくなるドラマだ。

原作に比べて強く世相を反映させた点ではドラマ『怪物くん』と同じ方向性を感じるが、内容としてはしっかりとオリジナリティーがあり新たな『妖怪人間ベム』になっているのではないだろうか。
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)