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【ドラマの女王】“世にも奇妙な学園ドラマ”!? 教師の頭の中を徹底解剖する『鈴木先生』。

月曜日の夜、テレビ東京らしからぬ暗い映像が流れていた。男のモノローグとその文字で画面が埋まっている。そして極めつけは「どうする?おれ?」と某CMを彷彿させるセリフ。一体なんだ?と見入っていると、驚くことに学園ドラマだった。その名も『鈴木先生』。武富健治の同名漫画が原作で、2007年には文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞も受賞している。

生徒からの人気も高く、私生活では同僚教師から誘われた合コンで彼女(臼田あさ美)も出来て順風満帆な鈴木先生(長谷川博己)。

そんな彼にはある目論見があった。生徒たちの内面に隠れている鬱屈とした感情を打ち破り、常識にとらわれない心に改革し、理想のクラスを作り上げるというものだ。しかし、そのクラスの重要人物(スペシャルファクター)として投入した女子生徒・小川蘇美(土屋太鳳)が、夢に出て来てから彼の中で変化が起きる。

このドラマは問題が起こる度、彼の思考を中心として進む。学園ドラマの定番である『3年B組金八先生』のように解決していく様子を見せるのではない。教師が問題に直面した瞬間から、何を考え行動しているのかを見せるのだ。
それでいて学園ドラマ特有の明るい雰囲気がない。問題自体は円満に解決するのだが、そのあと当人の中に残ってしまうしこりや気まずい空気をしっかり残すリアルさがある。そのリアルさが常に雨のような暗い画面を象徴しているようだ。『世にも奇妙な物語』のようなテイストが、見ている側を虜にし、次も見たいと思わせる。とても不思議な魅力を持つ作品である。

扱っている問題も決して軽いものばかりではない。鈴木先生自身も「ただの良い先生」ではなく、怒鳴る時は怒鳴り、生徒の話はしっかり聞く。そのメリハリが生徒から人気を得ているのだろう。けれど、内面では迷い、戸惑い、どの対処法が一番良いのか模索し、自身の恋愛の悩みもある。我々と何も変わらないのだ。

思い返せば、自分が学生だった頃に教師の考えていることなど想像もしなかった。そんな絶対に見ることの出来ない職員室での姿に、当時の担任を重ねてみるのも面白い。だが、鈴木先生は少しデキる人間で、模範解答のようにきれいにまとまりすぎているので自分の担任とはほど遠いかもしれない。そこは教師の内面に初めて触れる者には分かりやすく、ちょうど良い。

キャスティングで話題を作るわけでもなく、演出一本で人を虜にしている。一人の人間の思考回路をこれだけ上手く演出しているドラマは希少だ。そういった意味でもこのドラマは一見の価値がある。もうこれは単なる学園ドラマではなく、人間ドラマとして見るべきだ。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)