writer : testjournalist

【ドラマの女王】フジが予想を嬉しく裏切った。絶妙なバランス。阿部サダヲの『マルモのおきて』。

芦田愛菜ちゃんと鈴木福くんが歌う主題歌『マル・マル・モリ・モリ!』が着うたランキングで一位にランクインして話題となっているドラマチック・サンデー『マルモのおきて』(フジテレビ系)。愛菜ちゃんをはじめ主演に阿部サダヲを起用した面白いキャスティングでも注目のドラマだ。

高木護(通称マルモ・阿部)の元に学生時代の親友・笹倉純一郎(葛山信吾)の突然の訃報が舞い込む。その葬儀の席でマルモは笹倉の双子の子ども・薫(芦田)と友樹(鈴木)が離ればなれになってしまうことを知ってしまう。かねてから「二人はいつも一緒に」と話していた笹倉の言葉を思い出したマルモは、二人を預かることにする。しかし子育てはもちろん結婚すらしたことのないマルモにとって子どものいる生活は悪戦苦闘の日々。しかもなぜか二人の後を付いて来た犬の面倒まで見るはめになる。そしてその犬は幾度となくマルモに話しかけてきたのだ。

昨年から新設された日曜9時のドラマチック・サンデー。『パーフェクト・リポート』(松雪泰子主演)や前作『スクール!!』(江口洋介主演)など真面目な作品が続いている同枠。今回も他人の子どもを預かり子育てに奮闘する話ということで感動物語になるのかと思っていた。しかし放送開始直前のCMで犬が喋っているところを見て、驚かされた。「フジテレビは血迷ったのか」とまで思ってしまうほど予想外の展開だった。一体どんな話になるのだと記者の頭の中は疑問符だらけになった。

しかし始まってみれば、この犬が喋る設定は真面目な話になりやすい内容の良いアクセントとなっていた。少しお調子者で子どもの気持ちが分からないところがあるマルモの良きアドバイザーとなっている。なぜ彼(?)が喋るのかはまだ謎だが。

そんな子育てに奮闘するマルモを阿部が持ち前のキャラクターを活かしながら好演している。そこに3月のSPドラマでその演技力を見せつけた愛菜ちゃんや福くんの子どもらしい愛らしさと本当の親ではないマルモへの遠慮する気持ちを演じ分ける演技が加わり、良い化学反応を起こしている。三人のバランスがよく取れた作品になっている。マルモ役を阿部にしたのが正解だったのだろう。大人と子どもの明確なラインのない距離感やマルモの生活感が視聴者に自分と近いものを感じさせる。文房具メーカーのお客様相談室勤務という設定も良い。決して仕事が出来てお金に余裕があるわけではない。そんな庶民派であるマルモが薫、友樹と一緒に成長していく様子は明日も楽しく過ごそうという気分にさせてくれる。

もうすぐ日曜日が終わってしまうという憂鬱な時間帯にそんな暗い気分がいつの間にか吹き飛んでいる、そんなドラマだ。それに今クールはなぜか考えさせられるような真面目なドラマが多い。そんなドラマに疲れた方にもお勧めしたい。

そしてエンディングで出演者が『マル・マル・モリ・モリ!』を愛菜ちゃん、福くんと踊っている姿も微笑ましい。中でも共演者の世良公則が子どもたちと一緒に踊る姿はとても癒やされるので必見である。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)