writer : testjournalist

【ドラマの女王】大人を食う演技力も放送事故には敵わなかった。芦田愛菜主演SPドラマ。

ドラマ「Mother」でブレイクした人気子役、芦田愛菜ちゃんが主演したスペシャルドラマ「さよならぼくたちのようちえん」(日本テレビ系)がその内容以外で話題となっている。3月30日の放送開始前から愛菜ちゃんが一人で番宣に奮闘した同ドラマだったが、番組中に放送事故が起きてしまいドラマの内容どころではない結果となってしまった。

その内容は幼稚園の卒園を2週間後に控えた山崎カンナ(芦田愛菜)たち五人が、入院のため幼稚園に来なくなった谷口洋武(橋本智哉)のお見舞いに行く冒険物語だ。その道中、電車に乗り遅れたり、ケンカをしてはぐれるなど五人いたメンバーはカンナと植原拓実(佐藤瑠生亮)の二人になってしまう。そんな拓実も追ってくるパトカーから逃げられないと判断すると(二人は逮捕されると思っている)カンナと物陰に隠れ、「絶対出ちゃだめだよ。誰が来ても出ちゃだめだよ。バスが来たら乗り込むんだよ」と、どこでそんなことを覚えたのだと思うセリフをカンナに言い残し、オトリになるため飛び出す。その時、事件が起きた。

警察官に「僕一人かい」と聞かれ「はい」と答える拓実。その顔は逃亡者そのもの。拓実のあまりのイケメンぶり惚れ惚れしていると、画面が暗転した。初めは場面の切り替えのための一瞬のものかと思ったのだが、それにしては長い。次に浮かんだ可能性は、ちょうどその時間帯は東北と関東地方で何度か地震があり、地震情報を伝える番組に切り替えようとしているのかだ。一体どうしたのだと思っていると、画面は警察に保護される前の拓実がホットケーキを作った時のことを話していた。その間約10秒。地震速報で乱れただけだったのだろうと思うも、どうも様子がおかしい。それは回想シーンではなく明らかに時間が遡っているのだ。
ホットケーキの話が終わり暗転後初のCMに入ると、その理由が分かった。CMが明けて飛び込んできたシーンは暗転する数分前に一度見たシーンだったのだ。回想シーンではない。全く同じシーンなのだ。「これは完全な放送事故だ」と認識した。その頃ツイッター上でも視聴者から「放送事故だ」というツイートが見られるようになった。ホットケーキのくだりは未公開シーンだったと予想する声も上がった。日テレの公式アカウントも「原因は不明」とツイートした。
その後、放送中に「番組中でお見苦しい点がありましたことをおわびいたします」というテロップが二度流れたが、原因は不明のままだった。どちらにせよ事故の瞬間も、お詫びテロップの瞬間も感動的なシーンばかりだったために内容に集中出来なくなってしまった。テロップも終盤になってやっと表示するのなら、番組中ではなく最後でも良かったのではないだろうか。

園児だけで東京から山梨県へ移動させたり、いきなりホラーテイストになるなど、いくつかおかしな設定はあったが、一つ一つのシーンはとても良く久しぶりに良質なドラマを見たという満足感は得られた。子役五人の演技が恐ろしく上手く、連ドラで主演張っている若手など目ではなかった。愛菜ちゃんのすごさはもちろんのこと、拓実役を演じた佐藤瑠生亮が大穴だ。放送事故直前のイケメンぶりもそうだが、彼が卒園式の最後に泣きながら歌を歌うシーンは圧巻だった。

本当に勿体ないドラマである。さすがの事態に日テレも10日に改めて再放送することを発表した。記者を含め一度見た方は見比べることに余念がないだろうが、ぜひ見逃した方にも彼女たちの演技を見て頂きたい。それに加え、入院している洋武役の橋本智哉が幼い頃の神木隆之介を思わせるほどの美少年であることもみどころだ。

それにしても、タイトルから幼稚園がなくなってしまうのかと思っていた記者は、卒園式の定番ソングに同名の歌があることに驚いた。記者の時代にはなかったように思うのだが、最近出来た歌なのだろうか。まさかこんなところにも時代を感じてしまうとはと複雑な気持ちになってしまうのだった。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)