writer : tinsight-yokote2

【巨大地震・盛岡から】その21 「がんばらない岩手」から10年。県知事が新たに「がんばろう岩手!」と宣言。

実はかなり長いこと、岩手県は『がんばらない宣言いわて』という広告を全国紙に発信して来ました。ところがこの未曽有の大災害からの復興に向け、県知事はこのほど『がんばろう岩手!』と180度方向を転換する宣言を行いました。

“近代的なビルよりも木造の古い民家がいい。少しばかり弱くておとなしい印象を与えても、岩手はそういうカラーでいい。欲張らず力まずゆっくりと進んで行きたい” というのが以前の『がんばらない宣言いわて』であり、スロー&ナチュラル派が急増の日本ですから、当然ちょっとした話題になりました。

ところが今、ご承知の通り岩手の人々はイヤでも頑張らなくてはならない状況にあります。達増拓也知事は11日午後2時46分に黙祷を捧げ、「応急の対応と同時に復興ビジョンの策定を急ぎ、4月中には年間スケジュールを示せるようにしたい」と述べ、『がんばろう岩手!』と新たなる宣言を行いました。

一方で、うつの患者さんに「頑張って」と励ましてはならないのと同様、被災地の方たちも一生分の苦悩に打ちのめされているような状態であり、安易に頑張ってと声を掛けるのはどんなものかといった意見も出ているようです。悪意は無くとも言葉は難しいもの、誰もがそう感じていた中、大津波で壊滅的な被害を受けた陸前高田市からのある話題が人々の心を打ちました。

全長2km、美しい海岸線のシンボルであった名勝「高田松原」の7万本の松のうち、たった1本がこの大津波にも負けず奇跡的に生き残ったというのです。被災地の人々は、口々に「本当によく頑張った」と誇らしげにその松の木を見上げていました。しかしその松は海水によりひどく傷んでおり、根腐れで枯れることが懸念され、県大船渡農林振興センターが夏まで監視するということです。

頑張って耐えたものの弱くなってしまった松の木に、陸前高田の方々は「この松を見ていたら、自分も頑張らなくちゃと思った」と語り、くじけまいという気持ちを新たにした様子です。この「頑張る」という気持ちがある限り、皆さんは希望や目標を見失わず、存分に能力を発揮されることでしょう。そして疲れが出たら、互いに「よく頑張ったね」とたたえ合い、労い合うのではないでしょうか。

何しろ大津波、台風、大地震などこれまでも幾度となく天災に見舞われた岩手県です。それを復興させてきた何事にもくじけない精神は、宮沢賢治の “雨ニモマケズ” に象徴されていると思います。前を向いて頑張って行こう、一緒に頑張って行こう、岩手の人々は、再び心をひとつにして被災地の復興に向け努力を続けて行きます。この気持ちを鼓舞してくれる力強い言葉は、『がんばろう』以外に今は見つからないようにも思えて来ました。
(TechinsightJapan編集部 古瀬悦子)