writer : techinsight

【名盤クロニクル】平原綾香「my Classics」シリーズまとめ

(ジャンル:J-POP)

メジャーデビュー曲がホルストの「惑星」の中の木星のメロディの一部、通称「ジュピター」であった平原綾香は、その後J-POP大御所提供のオリジナル曲やニューミュージック系カバーなどを発表していたが、ここ数年はクラシックアレンジ曲に絞った「my Classics」シリーズを制作している。
今般、シリーズ3作目となる「my Classics3」がリリースされたので、これまでのクラシックカバーのまとめを紹介してみたい。

最初の作品集「my Classics!」は、それまで散発的に発表されてきたクラシックカバー曲の寄せ集めに加えて、曲の知名度を優先した感があり、正直、かなり無茶なアレンジ曲も多かった。

「pavane~亡き王女のためのパヴァーヌ」(ラヴェル作曲)や「Moldau」(スメタナ作曲)などは、明らかに歌曲向きではなく、J-POPのメロディイメージから逸脱しているため、失敗作の感が否めなかった。

しかし、気を取り直してリリースした2作目「my Classics2」では、凝ったアレンジに加えて、平原綾香のヴォーカリストとしての才能が炸裂した傑作に仕上がっている。

たとえば、「アランフェス協奏曲~Spain」は、クラシックというよりも、ジャズピアニストであるチック・コリアがアランフェスをモチーフに作った「スペイン」のカバーであり、平原綾香のスキャットの技が冴え渡る。

ベートーヴェンの第9終楽章「歓喜の歌」を、ゴスペルアレンジにした「JOYFUL, JOYFUL」も斬新。

チャイコフスキーのくるみ割り人形から「トレパック」をコミカルアレンジにした「ケロパック」とともに、ともすればバラード偏重になってしまうクラシックアレンジに新風を吹き込んでいる。

そして満を持して2011年3月2日にリリースされた「my Classics3」でも、多くの意欲的な試みを行っている。

まず選曲で意表を突いているのが、1曲目「私と言う名の孤独」(エルガー「チェロ協奏曲第1楽章」)と6曲目「LOVE STORY」(ベートーヴェン「交響曲第9番第3楽章」)である。

およそ、歌曲としてアレンジするということ自体が非常に珍しい曲であるが、秀逸なアレンジで、美しい曲に仕上がっている。

また、クラシックと言いつつもジャズテイストの導入も前作で行っているが、今回もガーシュイン名義の「Someone to watch over me」を取り上げている。

これはジャズスタンダードとして広く親しまれている曲であり、しっとりしたバラードで歌い上げている。

続く10曲目「ブラームスの恋」(ブラームス「交響曲第3番第3楽章」)は、もともと極めて濃厚なロマンティシズムを持つ曲で、歌曲アレンジをすると頽廃的ムードが出てしまう曲なのだが、ギリギリの線でJ-POPの範疇に踏みとどまっている危うさが面白い。

全体的に、「よく知られているポピュラークラシック」と「ややマニアックなクラシック」が、バランス良く選曲された好盤と言えよう。

平原綾香には、まだまだ表現していない領域が多く残っている。たとえば出世作「ジュピター」の原曲は、よく知られているメロディ以外に、2つの印象的なモチーフが存在し、少々マニアックだが、三部作として完結させてみてもよいだろう。

また、ジュピター的な世界としては、シベリウスの「フィンランディア」中間部などがあるし、プロテスタント讃美歌のゴスペルアレンジも面白いかもしれない。

さらにライブでは時折披露するが、サックスも吹けるので、ジャズスタンダードに取り組むという方向も考えられる。

多くの可能性を秘めた平原綾香の今後に期待せずにはいられない。

(収録曲)
1. 私と言う名の孤独 <チェロ協奏曲 第1楽章>
2. 春~La Primavera!~ <『四季』より「春」>
3. What will be will be <アリオーソ>
4. 大きな木の下 <あなたが欲しい>
5. Danny Boy <アイルランド民謡>
6. LOVE STORY 交響曲第9番 第3楽章 <交響曲第9番 第3楽章>
7. 別れの曲 <別れの曲>
8. くまんばちの飛行 <熊蜂の飛行>
9. Someone to watch over me
10. ブラームスの恋 <交響曲第3番 第3楽章>
11. Greensleeves <イングランド民謡>
12. ラヴ・ラプソディー <パガニーニの主題による狂詩曲>
13. アランフェス協奏曲~Spain (Live Version) <アランフェス協奏曲 第2楽章> [Bonus Track]
14. Danny Boy (English Version) <アイルランド民謡> [Bonus Track]
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)