writer : testjournalist

【ドラマの女王】女の怖さは底知れない。ドラマ「美しい隣人」で魅せる仲間由紀恵の狂気。

フジテレビ系列で火曜日22時から放送されている「美しい隣人」が怖い。

東京郊外に住む矢野絵里子(檀れい)の隣に引っ越して来た沙希(仲間由紀恵)が絵里子を陥れていく物語だ。98年に日テレで放送されていた「冷たい月」(中森明菜、永作博美主演)を思い出してしまうような内容なのだが、それとは違った女の隠れた怖さをこれでもかと描いている。目に見えない女の嫌がらせとはなんて恐ろしいのだろうと改めて思い知らされるドラマだ。

単身赴任中の夫・慎二(渡部篤郎)、息子の駿(青山和也)と順風満帆に暮らしていた専業主婦・絵里子の隣に引っ越して来た沙希は人懐っこい性格から周囲にすぐ打ち解けていく。だがその反面で絵里子の周りの人間に絵里子に不信感を抱かせるような言動をとったり、自分の家で絵里子を酔わせて絵里子の家に忍び込んだり、勝手に駿を連れ出したりと犯罪ではないかと思うようなことをする。ついには大阪に通い慎二と関係を持ってしまう。慎二は沙希が新しいお隣さんだとは知らない。

このドラマで仲間は初の悪女を演じている。「TRICK」や「ごくせん」または時代劇のイメージが強い仲間。しかしこれが、思いのほかはまっているのだ。あまり感情の起伏の激しいイメージのない彼女が大の男(沙希の夫)に殴る蹴る、手当たり次第物を投げるなどの暴力シーンは圧巻だった。これが仲間由紀恵なのかと見ていて驚いた。そう意外にもこの狂気に満ちた部分がはまっているのだ。表の顔は感情がこもっているのかよく分からない演技なのだが、視聴者は裏の顔も見ているため何もかもが不気味に感じてしまう。「この女、次はなにをするんだ」と深読みする。これだけ怪しい女になぜ絵里子は気付かないんだとイライラする。まさに制作側の思うツボなのだ。

東京郊外のご近所という設定も効果的だ。あまり外部から人が来ない閉鎖的な空間だからこそ一度いい人だと信じてしまえば疑わない。だから絵里子を含む誰しもが沙希を疑わないのだろう。その分、排除される時は一丸となって排除される。沙希はそこも上手く利用している。

沙希がなぜ絵里子に執着しているのかはまだ明らかにされていない。しかし物語の所々でヒントは出ている。一年前に絵里子が駿から目を離していなくなった時に川で溺れて亡くなった男の子が発見された。(駿は木に登り下りられなくなっていた。)沙希はその亡くなった男の子の母親なのではないかと思われるのだが、そこで絵里子がどのように関わっているのかは明確にされていない。なぜ絵里子なのか。沙希の最終目的はなんなのか。

物語はその答えに向かって動き出す。ついに沙希が慎二と隣人として対面するのだ。今後沙希は何を仕掛けるのか。そして仲間がどのように沙希の狂気を演じるのか楽しみである。そして女の世界はこんなにも恐ろしいものなのだと世の男性は学ぶといいだろう。

最後にこのドラマ、なんと放送開始前に撮影が終了していたという。打ち切りも少なくない昨今のドラマ事情の中で放送開始前に撮り終えているなんてなんという自信だろう。それはそれで恐ろしい話ではないだろうか。
(TechinsightJapan編集部 洋梨りんご)