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【親方日の丸な人々】民主党による改革がもたらしたもの 治水事業の闇

民主党政権下における「コンクリートから人へ」の施策は、十分な効果が出ていないとして批判的な声が聞かれるが、少なくともコンクリート行政の筆頭である国土交通行政には、ある程度のインパクトを与えている。そこで、国土交通行政の筆頭とも言える治水行政について、その影響度を紹介してみたい。

国土交通省河川局は、全部で9つの課がある。
主として事務・法令部門である総務課、水政課に続いて、河川環境課、防災課、そして河川事業の大もとを握るのが河川計画課と治水課である。

さらに砂防部という独立部隊が置かれ、直下に砂防計画課、保全課そして海岸室の3課を持ち、予算面でも事業面でも完全別働隊となっている。

いつの時代も局あって省なしと言われるお役所であるが、河川局の場合は、ひときわ声が大きく、実権を持っているのが、広く流域治水を司る河川計画課と主としてダム事業を司る治水課であり、この両者が極めて仲が悪いのである。

仲が悪いのであるから、ダム事業と流域治水事業が連携するはずもない。本来、100年に1回程度の洪水が予想される際に、既存ダムでどれだけ流量がカットできるかを見れば、流域治水事業への投資額もおのずと定まるはずだが、一方では60年かかっても完成しないダム事業を続け、他方は都市部のスーパー堤防といった目玉事業をぶち上げて、互いの調整など全く考えていないようである。

河川局では、治水専門の役人とダム専門の役人は同じ技官でありながら、別系統の人間とされ、それぞれの事業に関して別の利権を持っているので、双方の利権を拡大することにばかり腐心し、全体として洪水防止がどうあるべきかという視点が欠落していた。

民主党政権下で、治水事業見直しの目玉として挙げられた八ッ場ダムの見直しは、今般、地元県議会議員の会が、ゼロベースからデータを積み上げて、科学的な解析を行うことを求めたところである。

要するに洪水から人命・財産を守るのに、ダム建設と流域治水事業をどう連携するのか、その検討の中で必要なものを採択すればよいということである。

各自勝手な利権をむさぼっていた国土交通省河川局に一石を投じ、治水事業のあるべき姿を描くひな形として、八ッ場ダムの再検討については注視していく必要があるだろう。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)