writer : techinsight

【名盤クロニクル】「フォーク」からの脱出を告げる傑作 風「windless blue」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:ニューミュージック/AOR)

日本のフォーク史を語るとき、決して神格化されたりしてはいないものの、広く大衆に愛されたグループが「かぐや姫」である。南こうせつ、伊勢正三、山田パンダの3人によるこのグループがなぜ素晴らしかったのか。解散してソロ作を発表して初めて明確にされた象徴的な作品が、伊勢正三率いる「風」のサードアルバム「windless blue」である。

「風」は、二人組のユニットであったが、事実上、伊勢正三のソロと考えて差し支えない。

かぐや姫解散後、いち早く活動を開始した伊勢正三であったが、かぐや姫時代及びソロ2作目までは、あくまでも「フォーク」という音楽ジャンルの中で曲を作っていた。

ところが、1976年発表の「windless blue」で、いきなり都会的なAORサウンドへ変身を遂げる。

時代の空気としても、そろそろ「フォーク美学」からの脱出と、いわゆる「ニューミュージック」への傾斜が見られていたが、本作はそれさえ突き抜けた先進性が見られる。

かぐや姫のリーダーであった、南こうせつのソロが自然賛美的であったのに対し、伊勢正三は非常に都会的なサウンドを表現していた。

ここに至って、かぐや姫がなぜ素晴らしかったのか、往年のファンは改めて知ることになる。

全く対立する個性が、「かぐや姫」の中に共存していたからこそ、輝いていたのである。

伊勢正三の楽曲をギターでコピーしていた人なら、彼の使う難解なコードや、クセのあるメロディラインで四苦八苦した経験があると思われる。

ビートルズにおける、ジョンとポールの関係のあり方が、かぐや姫にも存在していたということである。

そして、ソロになるとお互いのけん制が利かなくなるので、個性がどんどん研ぎ澄まされていって、伊勢正三はどんどん都会的サウンドに、南こうせつはどんどん自然賛美に傾倒していく。

その分岐点になった象徴的な作品として、記憶にとどめられるアルバムである。

(収録曲)
1. ほおづえをつく女
2. 夜の国道
3. 3号線を左に折れ
4. 旅の午後
5. 通り雨
6. アフタヌーン通り25
7. 小さな手
8. 地平線の見える街
9. 君と歩いた青春
10. ふっと気がつきゃ
11. 少しだけの荷物
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)