writer : techinsight

【親方日の丸な人々】社会保険労務士試験が難しいワケ

不況が加速する折、資格取得の重要性は高まる一方である。
そんな中、特に女性に有利な資格に「社会保険労務士」という資格がある。試験問題は○×式が基本であり、コツコツと細かいことを勉強するのに長けている女性が取りやすい資格とされている。
しかし実際の試験はかなりの難関で、何度もチャレンジしてようやく合格という人も多い。今回はこの試験がなぜ難しいのかを通して、日本の地方自治の現状を考えてみることにする。

試験問題は、たとえば次のようなものだ。

「○○の設立については、厚生労働大臣の認可を要する」
○か×かといえば、この場合は×で正解は、所轄都道府県知事の認可である。

「●●については、都道府県労働局長への届け出を要する」
○か×かといえば、この場合は×で正解は、労働基準監督署長への届け出である。

社会保険労務士試験問題には、こうした届出や許認可の主体に関する問題が非常に多い。

なぜこのように複雑かといえば、地方自治とはいいつつ、国の出先機関ががっちり地方に食らいこみ、仕事を取っているからである。

届出は、都道府県労働局長、許認可窓口は労働基準監督署などという風にざっくり決めて、地方に任せることは任せるという施策をとれば、こんな複雑なことを覚える必要はないのである。

実際の開業社労士も、こんな複雑なことをいちいち覚えていられないので、手続き別に提出先や許認可窓口の一覧表を作って、机に貼っているのが現状だ。

公務員制度改革というかけ声ばかりが大きい昨今であるが、具体的には「行政コストの削減」「天下りの規制」「二重行政の排除」「地方分権の推進」と、個別の課題ごとに整理していくべきなのだ。

「公務員くたばってしまえ!」という気分先行の公務員改革ならば、官僚の抵抗にあってあっという間に骨抜きにされるであろう。

社会保険労務士の使命は、企業の労務管理に関する相談役である。役所の中途半端な地方分権の手続きを暗記するよりも、もっと重要な高い見識を持ってもらうべきなのだ。

今後の、公務員制度改革の行方を国民は注視していく必要があるだろう。
(TechinsightJapan編集部 石桁寛二)