writer : techinsight

高校無償化、現場は3割が否定的。「大学も無償化せよ」との声も。

公立高等学校の授業料無償化に関する法案が今年4月に成立した。これにより、来年度の高校入試ではいっそうの公立志向が強まりそうだが、現場ではこの制度導入に関してどのような声が挙がっているのか。気になる調査結果が公表された。

全国での進学イベントの開催や進学情報誌の発行を手がける株式会社さんぽうは、公立高校の無償化に関して高校の指導現場を対象とする意識調査を行った。

調査は法案成立直後の4月20日から30日にかけて関東甲信越地区10都県の高校を対象にFAXにより実施され、192校から回答を得た。

まず「無償化を歓迎するか」との問いに対しては、53%が「そう思う」または「ややそう思う」と回答しており、肯定的意見が半数を超えていることがわかった。一方、「あまりそう思わない」または「そう思わない」という否定的な回答も合わせて32.2%にのぼっており、一律に歓迎されているわけではないこともわかる。

一方、「高等学校授業料の無償化よりも教育関連の他の施策を優先して行われるほうが重要か」との問いに対しては、「そう思う」または「ややそう思う」が合わせて55.4%にのぼり、「あまりそう思わない」または「そう思わない」と答えた17.8%を大きく上回った。このことから株式会社さんぽうでは、「無償化は歓迎するものの、他にもっと有効な教育施策をすべきだとの意見のあらわれ」と分析している。

さらには、「高等学校授業料無償化により教材費や修学旅行費などの授業料以外の費用の支払いをしない保護者が増えそうか」との問いに対して、「そう思う」または「ややそう思う」という回答が40.7%にのぼり、集金に関する不安の声も挙がっていることが明らかになった。

調査に回答したある高校は、「教材費や修学旅行費などは集金しなければならないが、授業料は口座引落しで手数料もかからなかった上、事務職員の方で未納者の確認をしてもらえた。担任が徴収の催促に回ったり、お金の入り具合を常にチェックするのは大変な負担」と指摘している。また他の高校からは、「授業料を払わないと、進級や卒業できないという法律的な歯止めがあったが、それがなくなることで、今後副教材等の支払いをしない家庭が増えそう」と懸念する声も寄せられた。

このほか、自由記入意見には財源確保に関する不安の声が多数寄せられており、「詳細が決まらないうちの発進は、現場として混乱を招いている」「何年続くか疑問」「一度無償化したものを有償化するのは難しい」といった声も挙がっている。

ところで、高校無償化の次は大学・短大などの無償化も考えるべきだ、という声も多いことがわかった。「公立高等学校授業料無償化」よりも「上級学校における教育費負担軽減」が重要であるとの回答が全体の42.6%に達したほか、自由記入項目でも「さらに上級教育機関への経済的支援が必要」「国公立大学の授業料も減額すべき」という声が寄せられており、高校だけにとどまらず上級学校での教育費負担軽減も今後議論の対象になりそうだ。

調査結果の詳細は株式会社さんぽうのホームページにて公開されている。
(TechinsightJapan編集部 鈴木亮介)