writer : techinsight

【名盤クロニクル】武闘派ジャズ!山下洋輔トリオ「キアズマ」

(画像提供:Amazon.co.jp)

(ジャンル:ジャズ)

先頃再結成ライブを行いDVDも発売された山下洋輔トリオ全盛期の姿を伝えるライブ音源である。いわゆるフリージャズと呼ばれるジャンルに属するが、時としてプロレスにも例えられる戦闘的なサウンドとキレまくった音響は、まさしく「武闘派ジャズ」と呼ぶに相応しいだろう。

山下洋輔トリオが圧倒的なパワーを放っていたのは、評者によって意見が分かれるものの、ドラマーの森山威男、サックスの坂田明が在籍時の第二期の演奏が素晴らしい。

特に森山威男の繰り出すサディスティックなまでのドラミングに、ピアノとサックスが呼応する様態は、前衛ジャズの本場ヨーロッパでも高く評価されていた。

時として難解に聞こえるそのサウンドは、聴き方のコツさえ体得してしまえば、ヤワなロックなど一網打尽にするだけの破壊力を放つ。

今は昔だが、この手のサウンドは、日本では70年代新左翼の学生達にも愛好され、伝説の野外ロックフェス「三里塚幻夜祭フェスティバル」にもオファーが来て、出演している。

70年代後半以降は、ジャズの多様化に伴い、こうした戦闘的な音楽は次第に衰退していったが、90年代以降は音楽と「時代」とのリンクが意味をなさなくなってきたことに伴い、すべては「アーカイブ」として世代を超えて聴かれる土壌が形成された。

ニッポン・ジャズ界の偉大な1ページとして、歴史的に聴くもよし、あるいはスラッシュメタルの原型として聴いてもよし、さまざまに楽しめる素晴らしいライブアルバムである。

(収録曲)

1. ダブル・ヘリックス
2. ニタ
3. キアズマ
4. ホース・トリップ
5. イントロ・ハチ
6. ハチ
(TechinsightJapan編集部 真田 裕一)