2009年の音楽業界における大きなイベントのひとつが、ビートルズ音源のリマスター再発であった。
ビートルズのアルバムは、実は時代を超えて愛されているとは言い難い面がある。理由の一つは旧マスターにパッケージされた「60年代の空気」が、現在ではどこか隔絶感があったからであるが、リマスターによってビートルズが今の音楽時流に照らしても十分に素晴らしいことが改めて明らかになった。そのひとつが「サージェント・ペパーズ・ロンリーハーツクラブ・バンド」である。
名盤であることは、今更力説しなくても、ロック史を語るときに欠かせない名盤として知られているが、実はリスナーに与える影響よりも、同世代ミュージシャンに与えた影響の大きさにおいて、最高峰に位置するアルバムなのだ。
いわゆるビートルズのポピュラーな「名曲」は1曲も入っていないのであるが、このアルバムに詰め込まれた音楽的アイディアの多さは驚嘆すべきものである。
フルオーケストラ、インド音楽、テープコラージュ、バロック音楽などあらゆる要素が自然に取り込まれ、なおかつポップでもあるというのは奇跡に近いであろう。
そして、いわゆる「サージェントペパーズ世代」とも言うべきミュージシャンは、1960年代末以降、コンセプトアルバムやロックオペラといった形で自らの音楽を発展させていく。フルオーケストラを導入するという試みも、ルーツを辿ればこのアルバムに行き着く。ロックの黄金期とも言われる1970年代の多様な発展と実験は、ビートルズのサージェントペパーズ無しではあり得なかったと思われる。
そうした発展は、70年代後半のパンクムーブメントでいったん否定されてしまうのだが、現在ではそうした歴史性を語ること自体、あまり意味がなくなっている。ただ、このアイディア豊富な作品が1966年の作であるという事実だけは知っておいたほうがよいであろう。
リマスターによって最新作としてよみがえった44年前の名作を邦楽世代にも聴いて欲しいと願うところである。
(収録曲)
1. サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
2. ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ
3. ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ
4. ゲッティング・ベター
5. フィクシング・ア・ホール
6. シーズ・リーヴィング・ホーム
7. ビーイング・フォー・ザ・ベネフィット・オブ・ミスター・カイト
8. ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー
9. ホエン・アイム・シックスティ・フォー
10. ラヴリー・リタ
11. グッド・モーニング・グッド・モーニング
12. サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド (リプライズ)
13. ア・デイ・イン・ザ・ライフ
(TechinsightJapan編集部 真田裕一)
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