writer : techinsight

【3分でわかる】娚の一生

 引き続き「マンガ大賞2010」ノミネート作品を紹介する。今回は月刊flowersで連載中の「娚(おとこ)の一生」だ。

 「堂薗つぐみ」、30代なかば、独身。長期休暇を取って入院中の祖母の家で暮らしていたところ、祖母が亡くなった。親戚同士のさほど潤沢でもない遺産をめぐる争いに嫌気がさしたつぐみは宣言する。『私 買います ばあちゃんの土地全部』。

 翌日、つぐみがこれからのことを考えていると、庭に見知らぬ初老の男が。「海江田醇(かいえだじゅん)」と名乗る男その男は祖母から離れの鍵を預かっており、住むつもりでいるというのだ。早く出て行って欲しいと願うつぐみをよそに、海江田は結婚する予定と周囲にふれ回ることで一緒に住む口実を作っていく。

 奇妙な共同生活の中迎えた祖母の初盆。海江田は親戚一堂の前で祖母に憧れていた過去と、つぐみに対する思いを打ち明ける。あまりにも率直な物言いにつぐみの心は揺れ動くが……。

 30半ばと50すぎの味わい深いラブストーリー。少年漫画でよく見られる“押しかけヒロイン”ものの逆バージョンともいえばいいだろうか。しかし主人公は中二男子ではなく酸いも甘いもかみ分けたアラフォー女である。そう簡単には恋に落ちない。

 過去の辛い恋愛から“失う”ことを極端に恐れているつぐみ。幸せという言葉に過敏に反応し、まるで自分が幸せになってはいけないかのような考えを持っている。友人いわく、仕事で努力を重ねた末につかんだ成功を『男で不幸になることでセコくバランスとってる』のだ。

 海江田はそんなつぐみの性質を見抜き、ずけずけと心の中に入ってくる。『君はアホやなあ』『ぼくは 君をひとりにはせえへん』『君のその幸せウツに ぼくはつきあう気はない』、海江田の飾らない言葉がつぐみの心を溶かしていく。

 ラブストーリーなのだから当然のことかもしれないが、海江田が非常に格好いい。ロマンスグレーやちょい悪オヤジというほどの脂ギッシュさがなく、スマートであり、良い意味で枯れている。枯れ専という言葉を知ってはいるが到底理解できないと思っていた私ですら、海江田にはぐっときた。関西弁がまたたまらない。ドラマなりアニメなりメディア展開するのならば死ぬほどキャストを吟味してもらいたいものだ。

 作品全体を覆うどこかエロティックな雰囲気もいい。めくるめく官能、といった陳腐なものではなく、ふとした瞬間に心をよぎるときめきの陰にじんわりと劣情が滲み出すような、ほろ苦さのあるものだ。そういった意味でも、ぜひ大人の女性に読んでもらいたい作品である。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)