writer : techinsight

【ドラマの女王】“ゾンザイ”ニッポン医療を紀香が塩で“お清め”。『ギネ 産婦人科の女たち』

今回の【ドラマの女王】は、藤原紀香主演『ギネ 産婦人科の女たち』(日本テレビ系)。ブラジャーから塩出して撒いたり、入浴剤のCMで細川ふみえばりに“寄せ胸”したりと、とかくオッパイネタの尽きない藤原紀香。そんなごリッパな胸をお持ちの彼女らしい?ご立派な産婦人科ドラマは、悲しい事件の裁判が大きな転機を迎え、ようやっと主人公のモヤっとした濡れ衣も晴れたよう。

前回のこのコーナーで「本当の産科医はもっと優しい。」と書いたが、藤原紀香の柊(ひいらぎ)先生と、上地雄輔の玉木は相変わらずなれど、同僚の産科医・涼子を演じる板谷由夏や、産科医長・君島役の松下由樹、中村橋之助など大人の役者が演じる医師たちは優しくて、ドキュメンタリー番組で見た本当のNICU(新生児特定集中治療室)の先生たちみたい。橋之助演じる榎原先生が、卵巣がんで逝く少女を見送るシーンも感動的だった。

さて、大詰めの『ギネ 産婦人科の女たち』裁判の展開は・・・。
手術中に出血多量で死亡した妊婦・美和子(西田尚美)の死因が、血の止まらない病気だったため、柊(藤原紀香)の施した治療が効かなかったという事が娘・優美(吉田里琴)のケガから発覚。ひとまず救われた柊とギネたち。美和子の遺族で柊を訴えていた夫の慎一(八嶋智人)の店を訪れた柊は、「手術の事は早く忘れたい。」と言った事を謝り、深く頭を下げる。

複雑な心境の娘・優美を演じる吉田里琴ちゃん。昨年同局で放送された『オー!マイ・ガール!!』(速水もこみち主演)でちっちゃなレディ(ガールか。)を演じ、『メイちゃんの執事』(フジテレビ系)のミルク役を経て、このドラマ。売れてるなあ。いつもの“おふざけ”封印の、八嶋智人が演じる「人を憎みだした善人の父」もリアルだ。内田有紀と國村隼の仰天カップルはナシだけど。

日本国内に産婦人科医が減ってしまっている大きな原因のひとつにこの医療訴訟の問題があるのはご存知のとおり。被害者の家族は、保育園で子供が事故遭えば園と保育士を訴えるのと同様に、医療事故起これば病院や医者を訴える。ドラマの様に家族を失った場合は特に、やり場の無い悲しみを誰かにぶつけなければ何事も前に進めないからだ。しかし、現実には患者の死因をハッキリ判明させるのはとても難しい。精神をすり減らして診療にあたった子供や母体に何かあれば訴えられ、下手すれば犯罪者になってしまうという恐ろしい産科の現実を知れば、そりゃみんなやりたくなくなるだろう。

高齢出産が増えている今、新政権が新生児ICUの予算を削ってしまったり、“たらい回し”が問題となった東京の救急病院で必要とされている金の「何倍もの税金」をオリンピック誘致に使ってしまったりと、ドラマで言うまでもなく“ニッポンの医療”はひどくゾンザイに扱われている。藤原紀香が塩撒いて清めなければいけないのは、ドラマの現場ではなく国会だったりして。
(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)