writer : techinsight

【3分でわかる】ラブ★コン

 前回のフェロマニに続き、ノミのカップル物を。2006年に小池徹平主演で映画化された少女漫画「ラブ★コン」を紹介しよう。

 身長170cmの女子高生「小泉リサ」と、クラスメイトで156cmの「大谷敦志」は憎まれ口をたたきあう仲。まるで漫才のようなかけあいは校内でも有名で、1年2組のオール・阪神巨人と呼ばれている。

 互いに好きな人がいると知った2人は協力し合ってグループデートの約束を取りつけるが、好きな相手同士がいい雰囲気になってしまった。2人はそれぞれの恋に区切りをつけ、一つの賭けをする。『どっちが先に彼女もしくは彼氏ができるか』、2人は時にはげましあい、時にどつきあって親交を深めていった。そしてリサに芽生える、大谷への恋心――。

 友人だとばかり思っていた異性がある日突然、恋の対象に。リサの恋は、身長差を抜きにすれば大勢の少年少女が体験してきたタイプの片思いであり、恋愛漫画の一つの類型でもある。今までの関係を壊すのが怖くて告白できない、この甘酸っぱさは多くの人が共感できるであろう。しかし物語として成立させるためにはもう一つ二つオリジナリティがなければならない。この作品においてはリサと大谷の“漫才コンビ”設定がそれである。

 2人は友人や教師から漫才コンビのごとくセットとして扱われており、周囲には笑いが絶えない。まさにどつきどつかれて生きるのさであり、こんな2人が恋愛関係に発展するには、どう考えても一筋縄ではいかないであろう。

 さらには、大谷の鈍いこと鈍いこと。誰が見てもそうとわかるリサの想いに、大谷はいつまでも気づかない。無心からくる無神経な言動の数々に、リサ、友人ら、読者までもが“イーッってなる”ほどである。そんな大谷との対比もあいまって、リサの健気さがぐっとくる。どれほどおもろかろうが、“巨女”だろうが、恋する乙女はかわいいのだ。

 この作品は少女漫画とは思えないほどテンポがいい。ストーリー展開はうじうじ、もじもじで遅々として進まないのだが、台詞などの言葉のスピード感が圧倒的なのだ。

 これまた少女名漫画では珍しい全編大阪弁というのがいい方向に作用しているというのもあるが、単語のチョイスがおもしろい。映画公開時に流行した“キュン死に”は一度覚えてしまうとほかの単語で当てはめるのが難しいほど。個人的には女らしくできないリサへの友人からのアドバイス『精神的に乳を出せ』がツボだった。

 リサのおもろくもちょっぴりせつない恋はすべての女子に元気をくれる。もう一度だけ恋する力を信じてみたい、そう思わせる作品である。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)