writer : techinsight

【クリたまTVウォッチ!】『カムイ外伝』よりヒドイ!『TAJOMARU』は小栗旬のキャリア的に“アリ”なのか。

現在公開中の小栗旬主演。宣伝の為に『はなまるマーケット』にやって来た小栗旬。彼が語ったこの映画にかける情熱と、松方弘樹、萩原健一、柴本幸などの豪華な共演者、冒険活劇を予感させる紹介VTRなどを見て、公開前からワクワクしていた記者。公開後、いざ映画館へ。そこで見せられたのは、“アノ映画”よりもとんでも?なストーリーと驚愕なキャストが活躍する映画だった。(ネタバレあり。ご注意ください。)

松山ケンイチ主演『カムイ外伝』を先に見たいがために、鑑賞がとうとう公開後3週目を過ぎてしまった小栗旬主演。この二つの映画は似たような時代設定と、似たような度合いの人気を誇るイケメン俳優が、似たようなタイミングで主演し公開された双子のような映画。これに、草なき剛の『BALLAD 名もなき恋のうた』を挟んで現在公開中の時代劇三つ巴の戦いになっている。こんなに話題作をドカドカ公開したんじゃ今度のお正月の邦画は一体何があるのだろう。

しかしながら『カムイ外伝』と、『TAJOMARU』は今でちょうどいいのかも。どちらも好きが嫌いがはっきり分かれる映画に仕上がっている。2本見た上で記者は、『カムイ外伝』の“相手役ちがい” にもビックリしたが、『TAJOMARU』の“原作ちがい”にも驚いた。

まず、『TAJOMARU』は芥川龍之介の小説『藪の中』を原作としているのであるが、作中の登場人物の盗賊の名前が多襄丸(たじょうまる)であるという以外、あんまり絡んでない。どちらかと言うと冒頭、武家の子供だった主人公・畠山直光が貧民の少年を拾うところから始まり、その子が後に畠山家を脅かす桜丸(サクラマル)に成長するあたりが、ブロンテの名作「嵐が丘」みたいに思えた。(「嵐が丘」は昔故・松田優作が主演し時代劇映画になった。)

で、そのサクラマルを演じているのが田中圭で、どうみてもこっちの役の方が“主人公よりも”オイシイ。“身の毛もよだつ”『スマイル』。での小栗旬を知っている記者は、マヌケで善良な愛に生きる男よりも、欲に駆られた陰謀者の小栗が見たかった。そこは残念だ。

それはいいとして次に驚いたのが元々の多襄丸(TAJOMARU)は、小栗ではなくて松方弘樹。そしてまたこの松方がチャーミングすぎる。劇中登場する萩原健一と並んで貫禄が凄くて、この二人が出てないシーンがつまらないのだ。決して、若手が下手なんじゃなく、みんな一生懸命だし、舞台、映画と活躍がめざましい柴本幸の姫はさすがにカワイイ。ラストの小栗と田中の殺陣もとてもキレがいいのだが、松方と萩原じゃかなわない。この二人、年喰おうが脇だろうがスターのオーラ全開なのである。

意表をついたストーリー展開と、驚愕のキャストにずっと驚いていると、たった一シーンだけ「小栗旬萌え」なシーンが。“貢物”の若い女に手を出さず“見るだけ”のTAJOMARU。その小栗の視線がエロい。『花団』で見せたこういう魅力は大切にしたいところだが、今回はこれだけ。いいのか小栗?キャラがどんどん薄まってるけど。

『カムイ外伝』のクーたん同様、安っぽいB’zの主題歌「PRAY」が流れ、映画は終わる。劇中、たいして活劇でも無いシーンにリンキン・パークなどの洋楽が使われ、インスタントな作りが見えて逆効果。中野裕之監督はミュージックビデオ出身だそうだが、ここは何かおかしいような気がした。

冒険、アクション、恋愛、活劇、それを全部盛り込んだといっちゃ盛り込んだけど、どれをとっても光ってないのが特徴の『TAJOMARU』。決してつまらない映画ではなく、一瞬たりとも目が離せないのだが、今をときめくイケメン俳優が、3、40年前のスターたちに喰われまくる姿はなんとも痛い。と、記者は思う。
小栗旬のキャリア的に、この映画はアリなのだろうか?
(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)