writer : techinsight

核攻撃?テロ?謎の異空間へ漂着した男女。『漂流ネットカフェ』

(C)押見修造/双葉社・「漂流ネットカフェ」製作委員会
キングレコード株式会社

ある時突然、大都会の真ん中にあったはずのネットカフェが「鬱蒼とした森の広がる異世界」に漂流したら・・・・。
「漫画アクション」(双葉社)で連載中の押見修造による原作漫画を、注目の劇作家、前田司郎が脚本した『漂流ネットカフェ』。今年春に放送され、豪華キャストで綴られるそのミステリアスな異空間映像が話題となった。このドラマがこの秋完全DVD化されている。

現代の都会から切り取られた不思議空間の物語、それは、ある嵐の夜から始まる。
「鬱蒼とした森の広がる異世界」に漂流したネットカフェ。驚く客たちと共に、かつて同級生だった土岐耕一(伊藤淳史)と遠野果穂(KIKI)は必死で活路を見出そうとするのだが・・・・・・。
考えられる事は、核攻撃、テロ、「自分たちは心理学の実験台になっている。」「これは臨死体験だ!」突如のネットカフェ漂流に困惑する都会人たち、それは“居心地の良すぎる社会”につい漬かりぎみな現代人そのものの描写でもある。

閉塞感のある極限状態に追い込まれた人々の言いようの無い不安や焦り、ひとりひとりが抱えた深い事情などの漫画とは一味ちがう表現方法は、現在上演中の前田の代表作 、『生きてるものはいないのか』(五反田団)の世界にも通じる。彼の得意とする都会的でユニークなセリフが、ドラマのストーリーにリアルな恐怖を感じさせる。

非常時も人間としての優しさを忘れない耕一を伊藤淳史が好演。ミステリアスなヒロイン遠野を演じたKIKIは、このドラマの後、『華麗なるスパイ』でまた違う魅力を見せた。他に浅見れいな、浦野一美 (AKB48)や高橋真唯、吉武怜朗などの若手、利重剛などの奇怪なオジサマたちがカオスな森の中で展開する全11話。“秋の夜中の一気見”には最適なドラマだ。
ドラマ鑑賞と同時に現在連載中の原作漫画も合わせて読み返してみたい。
(TechinsightJapan編集部 クリスタルたまき)