writer : techinsight

【3分でわかる】メンズ校

 暑いんだか寒いんだかはっきりしなかった夏も終わり、季節はすっかり秋である。秋といえばイケメンだ。方々から異議が聞こえてきそうだが却下させていただく。秋といえばイケメンなのである。大事なことは二度言うのが基本だ。というわけで久しぶりにイケメンてんこ盛りの少女漫画を物色し、格好の作品を発見。ベツコミにて不定期連載中の「メンズ校」である。

 脱出不可能なことで知られるアルカトラズ刑務所。その支店と呼ばれる場所が日本にあった。最寄駅からフェリーに乗らないとたどり着けない、全寮制男子校「私立栖鳳高校」である。男子高校生ばかりが300人超、これだけでビールが何杯でも飲めそうだ。

 とはいえ、全校生徒が作品に登場するわけではない。この作品は主人公「牧主悦(ちから)」とその仲間たちが濃縮還元100%の青春を謳歌する物語である。ちなみにコミックス1巻背表紙には“性春MAX★ボーイズライフ”とあるが、性的な要素はゼロに近く、またボーイズライフであってボーイズラブではない。あざといコピーだと感心しきりである。

 そう、この作品は舞台が全寮制男子校であるにもかかわらず、待ってました的なわかりやすいBL要素は皆無だ。それどころかなぜか毎回女性が登場し、メンズたちと恋のようなそうでないような、微妙なやりとりを展開する。その一つ一つは少女漫画界では非常にまっとうなものである。

 乙女系であることを隠して付き合っていた彼女にカミングアウト。血のつながらない姉への思いをひた隠す。一見地味な保険の先生(女)を劇的に美しく変身させ、ついでにゲット。友達の彼氏に恋をする女の子の彼氏のふりをしてダブルデート。実に少女漫画らしい恋模様の連続だ。

 本来ならむさ苦しいはずであろう男子校を、作者の和泉かねよし氏はいかにさわやかに描くことか。男性からすれば、こんな男子校ねぇよ、と思うであろうが、主な登場人物すべてがイケメンなのでフィクション性の高さは当然のことである。念を押すが、絵柄的に全員がイケメンに見えるのではなく、きちんとイケメンだという設定なのだ。女子校でキャッキャする美少女たちは男性諸君の大好物であろう。同様の感情は女だって持っている。

 主人公・牧は童顔ちびっこ系イケメン。この手の作品には必ずいる王子キャラがいるものだが、メンズ校におけるその役割は「神木累」が担っている。しかしそれは従来の王子とはややベクトルが異なり、ある意味メンズ的で興味深い。私個人は「野上英敏」がイチオシ。彼は俺様メガネ界に新風を吹き込む存在であるといっても過言ではない。

 キャラのたったイケメンたちがあれこれする姿は非常にほほえましい。作中シリアスな場面もあるがそれはあくまでキャラメルに塩を入れるようなもので、全体的にはコメディタッチで進んでいく。おのおのが抱えていそうな心の傷を、唯一はっきりとした形で描かれているのはコミックス6巻現在で牧のみ。つまり読者は安心してメンズたちの右往左往を眺められるのだ。

 久しぶりにすがすがしいまでの少女漫画を読んだ。“トキメキに殺され”たいあなたにオススメの作品である。
(TechinsightJapan編集部 三浦ヨーコ)