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【3分でわかる】ぼくの地球を守って 後編

2009年5月24日 13:24

 前世の記憶を共通の夢として見る「坂口亜梨子(ありす)」ら5人の高校生と、7歳の小学生「小林輪」。彼らの前世は悲劇的な末路を迎えていた。




 彼らは地球を観察、研究するために作られた月基地で共同生活を行っていた。メンバーは才色兼備の「木蓮(モク=レン)」、攻撃的だが不思議な魅力を持つ「紫苑(シ=オン)」、品行方正な優等生「玉蘭(ギョク=ラン)」、内向的で一途に玉蘭を想う「槐(エン=ジュ)」、槐の親友で快活な女性「繻子蘭(シュス=ラン)」、ミステリアスな部分を持つ「秋海棠(シウ=カイドウ)」、責任感の強いリーダー「柊(ヒイ=ラギ)」の若い男女7人である。

 彼らの故郷“仮母星”シアは、“大母星”をめぐっての戦乱が激化し、彼らを月基地に残したまま滅亡。故郷を失った衝撃と不安でメンバーたちの間にも亀裂が走る。そして発生した伝染病。一人、また一人と病に倒れ死んでいき、木蓮と紫苑だけが残った。ほどなくやって来た木蓮の死。その後、紫苑が発病したのは実に9年後のことであった。紫苑は長い歳月を孤独と狂気にさいなまれて生き、死んでいったのだ。

 木蓮らのシアでの生活から死に至るまでが、それぞれ対応する記憶を持つ現世の登場人物の夢や回想という形で断片的に現れる。それは読者に見せるための世界観に基づいた統一感のある回想シーンではなく、あくまで個人の主観によるもの。よって、同じ場面でも記憶の持ち主によって違う意味を持つことが多く、伏線やミスリードに満ち溢れている。全容を理解するためにはジグソーパズルのように複数の登場人物の夢をかき集めなければならないのだ。

 紫苑と木蓮に関しては、それぞれ輪とありすの夢としてまとまった長さで描かれている。戦地に生まれ、生き延びるために不思議な力“サーチェス”(地球でいうESPに相当)によって人を殺し、施設で育った紫苑。神の使い“キチェ・サージャリアン”として“楽園”で窮屈なまでの特別扱いを受けてきた木蓮。まったく境遇の違う2人の生い立ちから月基地での出来事まで、それぞれの目線で語られる。

 これにより明らかになるのは、お互いがお互いを想っていること。両思いではなく、それぞれが片思いをしている状態、といえばいいだろうか。本当は好きあっているのに、紫苑は木蓮が玉蘭を愛していると勘違いし、木蓮は紫苑に嫌われていると思い込んでいるのだ。悲しいすれ違いは2人の死をもってしても終わらず、そのまま輪とありすに引き継がれる。

 木蓮、紫苑以外の登場人物もさまざまな思惑を抱えている。特に目につくのがひがみやねたみ、劣等感といった負の感情であり、月基地には轟々たるコンプレックスの嵐が吹き荒れている。かといってそれは読者に嫌悪感だけを与えるものではなく、善悪の線引きもしていない。人間ならば誰もが持っている当たり前の心の闇として描かれているのだ。

 月基地メンバーたちの心の闇は完全には解消されることはない。それどころか現世にまでその感情を持ち込み、それに流されたり、抗ったりする。最終的にはそれを抱えたまま大団円を迎えるのだが、読後感が非常にいい。けっして明るい展開ばかりではないのだが、読み終えた後はなんともいえず心地よい気持ちになれるのだ。

 少女漫画というだけで苦手意識を持つ人も多いかもしれないが、これは自信を持っておすすめできる。少女漫画には欠かせない恋愛の要素も確かにあるが、比較的ストイックに描かれているので鼻につくことはないだろう。ひたすらバトルバトルの少年SF漫画に飽きたら、ぜひ手に取ってみてほしい。

(編集部:三浦ヨーコ)

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