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【ドラマの女王】奇跡は期待できない? 『ありふれた奇跡』

2009年2月6日 11:15

今回の【ドラマの女王】は、仲間由紀恵、加瀬亮主演のフジテレビ木曜劇場『ありふれた奇跡』。どこにでもいる普通の男女の出会いと結婚、二人を取り巻く家族模様と主人公達の「心の傷」などがテーマの、冬にありがちな“しんみり”ドラマ。どの批評を見ても『ふぞろいの林檎たち』の大御所センセイに気をつかって絶賛されているこのドラマだが、いくつかの“何か腑に落ちない”点に気づいてしまったのだ。




フジテレビ『ありふれた奇跡』のHPには山田太一氏の製作日誌のようなコーナーがある。そこの文章から
「翔太(加瀬亮の役)の職業は左官職人です。“あまりメジャーな仕事ではない”し、知らない人もいると思いますが、左官とは壁に土やコンクリートを塗っていく仕事をしている人です。」

というのがあった。ここで、山田氏が左官職人を“あまりメジャーなでない仕事”と、くくっているあたり、庶民感覚に欠ける。
左官屋さんは、建築業ではなくてはならない職人だし、昔からいる。そして今もいっぱいいる。若者が「手に職」をつけたい時に一度は考えるメジャーな職種である。

このドラマ、いったい誰に向けて発信したいのかが分からない。
山田太一が照準を合わせる“ドラマの視聴者”は、主人公の「加奈のお家」のようなエリートサラリーマン家庭の主婦と娘なのだろうか。

お料理教室の先生をしている加奈は、1人でスナックに酒を飲みに行くような暗い女。いまどき普通のOLはもっと他にやることがある。しかも実家暮らしなのにつつましく、オシャレもしない。
翔太の方も、独身なのに遊びに行く様子も無いし、貧乏くさくて、「サラリーマン家庭の娘と結婚できるかどうか」だとか、つまらない事にウジウジ悩む。

たしかに不況で、「一般人は生活が大変!」と言われているが、世間の働く“独身男女”はもう少し「恋愛」を楽しむ余裕くらいある。たとえ過去になにかあっても、出会って結婚を意識する男女には、もっと燃えあがる「何か」がきっとあるはずだ。

そのチャンスを潰しまくる加奈。せっかく出会えた“久しぶりのオトコ”とのデートで、「過去の自殺」や「自分の責任で妊娠出来ない事実」など持ち出す。これははっきり言って怖い。

そんな加奈を演じさせられている仲間由紀恵にまったく同情できず、彼女の暴言を「M男」のごとき忍耐強く受け止めている翔太。彼もやっぱり自殺経験者で暗い。見ようによっては『銭ゲバ』の風太郎よりも暗い。

陣内の「生きている事が奇跡だ」とか、風間父の「趣味があってよかった」などのセリフで感動を誘うはずのシーンも状況が“突飛すぎて”共感できない。
どこが『ありふれた奇跡』なのだろう。
丁寧に作ったドラマだから、丁寧に見ないとそれが分からないように出来ているのか。
”鈍感”な記者には、彼らの心の機微を読む事ができない。

話題の俳優、加瀬亮はさすが普通の男子を演じてもカッコイイ。
祖父の親方(井川比佐志)と囲む食卓シーンなど細かい演技が光る。料理を作ったり、ご飯をよそったりの「手先の所作」がとても美しいのだ。男性なのに。
それに対し、仲間の表情や動きに「女性らしさ」が無く、すぐ怒るので見ていてゲンナリする。このままでは結婚しても絶対に幸せになれないぞ。

仲間以外に女優があまり出ておらず、「花を添えている」といったら、いつまでもキレイな八千草薫くらいか。あと、体調の優れない加奈の母(戸田恵子)の今後が気になる。子ども達より先に、仲良くなってしまった二人の父親(岸部一徳、風間杜夫)の「共通する趣味」とは?それはドラマを見てほしい。
「自殺男」の陣内孝則が、ストーリーにあんまり絡んでこない上に、出てきてもうっとおしいばかり。
心安らかに天に召されるような「エンヤ」の同名エンディング曲、これがまたミスマッチ。山田センセイの庶民感覚同様、ミスマッチなのだ。

いまの所、なにもかもゲンナリとした『ありふれた奇跡』。ものがたり終盤になにか“奇跡”が起きて、みんなが幸せになるのだろうか。それまでは「退屈な時間」が続く。
(編集部:クリスタルたまき)

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