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今回の【ドラマの女王】は、話題の松山ケンイチ主演『銭ゲバ』。昨年末から世界中で加速する不景気。そんなご時勢だからなのか、あえて金に執着する『銭ゲバ』がとうとうドラマ化。内容表現の過激さから、昔は有害図書扱いだった原作を人気沸騰中のマツケンが演じる。
幼い頃のつらい回想が交差する演出は70年代よろしく古臭い。畳の下にお札を並べ、感情が死に人生に希望を持たない風太郎。職場と狭い部屋の往復や、働く工場で次々行われる“派遣切り”の描写が、「秋葉原事件」の孤独な犯人をイメージさせる。
キレーな超高級マンションで“恋”の駆け引きが繰り広げられる『ラブシャッフル』の対極にあるようなこのドラマ。原作はジョージ秋山の作で、1970年『週刊少年サンデー』で連載がスタートした。どうしても、連載開始1年前に実際に起きた連続殺人事件の犯人「永山則夫」が脳裏に浮かぶ。
米軍宿舎から盗んだピストルで4人を射殺した永山被告は、博打に明け暮れる父親の放蕩生活によって、幼少期から家庭は崩壊、母も逃げてしまう。犯行当時19歳の永山被告の犯罪は極度の貧困や愛情不足から、同情に値するか論議されたが極刑は免れず、1997年に死刑が執行された。ドラマ主人公の生い立ちと被る。
ドラマ『銭ゲバ』の風太郎の母(奥貫薫)は優しかったが、父(椎名桔平)は“永山の父”そのもの。母の死後、やがて少年は感情を失い「金」を恨み、「金」だけに執着する若者へと変貌していく。
第1回で、人を2人も殺してしまった風太郎、「当たり屋」までして接触した同級生のお嬢様や、心温かい定食屋の人々とこれからどう絡んでいくのか。
さして美男子でも無い松山ケンイチ。マンガのキャラクターをなぞらえる才能は認めるが、主人公の“本質”を理解しない演技はくれぐれも避けて欲しい。『デトロイト・メタル・シティ』で言えば、本当にポイントが高いのは、表面に出る強い人格「クラウザーさん」ではなく、心優しい「根岸崇一」の方だ。松山が演じるとこの辺のバランスが妙に崩れる。『銭ゲバ』も、殺人者なのにヒーローになる危険がある。
軽快で情緒豊かな『浮浪雲(はぐれぐも)』とは違う“人間の欲”がストーリーの軸となるジョージ秋山のもう一つの世界を、若い松山がどう演じる事ができるか。暗に暗いだけのドラマではなく、「つらく苦しい境遇にあっている人々」に希望が持てるような展開を望む。
(編集部:クリスタルたまき)
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