日本でも法を逸脱した借金の取り立てがしばしばニュースになるが、この不況下で回収する業者が必死になるのはどこの国も同じだ。このほどリトアニアの借金取り立てを代行する会社が発案したのは、返済を滞らせている債務者に魔女をけしかけるというアイディアだが、一体何を考えているんでしょうか。
リトアニアの首都、ビリニュスにあるこの会社は金融危機のさなか、借金の支払いを滞らせている会社や個人を追い詰めるために、バルト海沿岸で最も有名な魔女ビリヤさん(Vilija Lobaciuviene)を雇った。この会社の幹部は魔女採用の意図をこう語る。
「昨今の金融危機に乗じて、銀行や企業への返済額を減らそうとしている不届き者がいるんです。我々の新しい従業員は彼らに状況を理解させ、何が正しく、何が間違った行いなのかを再考させて、行動を変えるよう促すのです。」
要するに、タチの悪い債務者を“更正させる”ためなら手段は選ばないということのようだが、こんな風に言うと格好もつく。
「我々はまた彼らが破産するのを防ぎ、ひどい精神的ショックを被るような事態から救い出そうとしているんです。」
自称、“リトアニアの有力な魔女”であるビリヤさんは、旧ソ連時代から多くの人に予言や魔法といったサービスを提供して有名だった。彼女が“患者”を助ける時には、催眠術や薬草、バイオエナジーフィールド(詳細不明)を使うらしい。彼女はAP通信のインタビューに答えて、「私の助けを必要とする人がいるなら、できることは何でもしてあげたいわ」と言った。
しかし、地元の心ある人々は今回の騒動に呆れている。コラムニストのモニカさんもその一人だ。「これは暗黒時代への逆戻りです。もし、この会社が本当に彼女の能力を信じているとすれば、この国はもうおしまいです。」
会社の業務に魔女を動員するというのもずいぶん斬新だが、日本でも大企業の社屋の上にお稲荷様を祭っていたり、政治家にお抱えの占い師がいたりするのは珍しいことではない。先進国の日本ですらこんな状態なので、途上国では尚のことだ。つい最近もこんな事件があった。昨年9月、アフリカのコンゴで行われたサッカーの試合中、劣勢だったチームのゴールキーパーが試合の流れを変えるため、前に出てきて呪文を唱え始めると、これが相手チームを刺激して大乱闘となり、11人が死亡するという事件があった。これも誰もがその呪術の効力を信じていたために起きた事件だと言える。コンゴのように根強く呪術信仰が残っている地域は決して少なくない。
人の思惑通りにはいかない世の中で、それでも自分の思い通りに事を運びたいという人間の欲がなくならない限り、呪術も魔術も生き続けるだろう。本当に怖いのはオカルティズムよりもむしろ、手段を選ばず願望を叶えようとする貪欲さの方である。
(編集部:こてつ/イラスト:acca)
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