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<テック推薦図書>『八日目の蝉』 たった1日長く生きた八日目の蝉が見たものは?

2009年1月14日 9:00

逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか...不倫相手の子供を衝動的に誘拐してしまった主人公の女性を7年、土の中で生きて、地上に出て7日間、生きる蝉になぞらえる。もし、その蝉が7日で生を全うせず、8日目に生きていたとしたら、どんな世界を見るのだろう。あるべき人生から大きく逸脱して生きようとする時、そこには、どんな世界が広がり、何を見つめることになるのだろうか。子供の誘拐という重い罪と理性、愛情、憎悪、トラウマ...やがて成長した子供の視点へ、そして運命は静かに輪廻していく。




「八日目の蝉」という何とも謎めく、それでいて重いテーマを感じずにはいられない。
不倫相手の生後6ヵ月の娘を誘拐し、自分のもとに生まれてくるはずだった子供と、その女の子を重ね合わせ、薫と名づけ、逃避行を続ける主人公の野々宮希和子。
そこには、温かな親子の関係が成立し、大きな犯罪であるけれども子供を我が子として守ろうとする主人公の強い愛情と意志には胸が痛む。

そして、20年後の薫の視点から描かれるその後の家族との関係、トラウマ、葛藤など、さまざまなその1つの事件が投げかけた波紋の大きさを思い知る。やがて、彼女の身に起こった衝撃の事実。
事件に翻弄され、自分を見失いそうになりながらも自分と向き合い、生きようと決心する薫の姿に心をうたれる。

7日しか生きられないはずの蝉がたった1日、長く生きたとしたら、そこには、どんな世界が横たわっているのだろう。
八日目の蝉は、その目で何を見て、何を感じるのだろう。
決して見ることのない現実、今まで見ることのない未来としてしか存在しなかった世界が見えた時、八日目の蝉は、幸せだったのだろうか。そこには、自分だけしか見ることのできない世界があり、寂しさや不安しかないのかもしれない。蝉にとっては、決して見てはいけない現実だったのかもしれない。
母親とは?、親子とは?、人間とは?...そんなことが様々な登場人物の何気ない会話や行動に改めて考えさせる作品だ。

目の前に与えられた現実から逃げるのではなく、それを経験値という鎧に替えて、そこから先の人生を歩めと諭されているように感じる。人間は、案外、強い生き物なのかもしれない。

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