ワシントン州ノースシアトルの自宅ベッドで、ブレンドン・フォスター君は21日、白血病のためたった11歳の短い生涯を閉じた。しかし彼は最後の一週間という限られた時間に、多くの人々の心に温かい感動を残し、穏やかな笑顔とともに天国に召されていった。
宿題をさっと済ませて外に遊びに出るような元気な男の子であったブレンドン君は、3年前突然白血病を発症し、毎日をベッドの上で過ごすことになってしまった。数々の治療にも耐え、必死の闘病が続いたが寛解することはなく、ブレンドン君は大変不運な状況に陥っていた。
11月も中旬を迎え、余命はあと1週間と医師に宣告された母ウェンディーさんは、ブレンドン君に「最後の望み」を語ってちょうだいと話した。すると返ってきた答えは、人々の役に立ち、困っている人を助けたいというものであった。
「ホームレスの人々を助けてあげたい。あの人たちはきっとお腹がすごく空いていると思うんだ。だから食べ物と飲み物をあげたい」と、具体的にやりたいことを話し始めた。しかしウェンディーさんはどうしてよいのか分からず、周囲の勧めでABC系地元テレビ局「KOMO」に協力を要請してみた。
さっそく取材に訪れたインタビュアーに、ベッドに上体を起こしたブレンドン君は、「あと一週間くらいで僕は死んでしまうらしいんだ」と静かに話し始めた。「もう仕方がないよ、運命なんだ。でも楽しいこともいっぱいあったよ。そのときが来るまで、きっと楽しく過ごせると思う」と、死を冷静に受け止めている様子がテレビカメラに収められた。
しかしブレンドン君にはもう体力が無くなっており、自分が出向いて飲食物を配ることなど出来るわけもなかった。KOMOの呼びかけに名乗りをあげたのは、オーバーン市の「エメラルド・シティ・ライツ・バイク・ライド」という組織が募ったボランティア・グループで、彼らは包みに「愛をこめて、ブレンドンより」と書かれた200余りのサンドウィッチをシアトルのホームレスたちに配布した。
この話に、全米各地からもブレンドン君を応援したいとたくさんの物資が届き始めた。ロサンジェルスのテレビ局からは食料を載せたトラック、オハイオ州の小学生たちは持ち寄った缶詰類、フロリダの人々は生活物資などを次々と運んでくれたおかげで、それらはトラックにして6台半の量にもなった。
また6万ドルもの現金が人々から寄せられ、物資とともに一旦「ノースウェスト・ハーベスト&フード・ライフライン」に集められ、関わるボランティアの数もついに数百人に増えた。こうしてブレンドン君の自分よりも他を思いやる美しく清らかな心は、多くの人々の心を打ち、親切の輪が広がっていった。
たくさんの嬉しい情報とともに充実した日々を過ごすことになったブレンドン君は、亡くなる前日、信じられないほどのエネルギッシュな行動に出て母親のウェンディーさんをびっくりさせたという。
酸素ボンベから供給される管を外したいと言い出し、ベッドを飛び出てビデオ・ゲームを買いに行ったのだ。「この時ばかりは、やはりまだ子供なんだということを痛感しました」と語るウェンディーさん。
そして本当に最期が近いことを感じたウェンディーさんは、ブレンドン君に“自分のために”何かもうひとつお願い事はないの?と尋ねたという。すると「ハチが今大変な状況らしいんだ。野草がもっと必要だよ。その種をいっぱい蒔いてあげたい」と、またしても自分の利益には関係ない望みを口にした。
ふたつ目のその望みに対しては、現役を引退したパイロットが名乗りを上げてくれた。彼は友人である現役のパイロットと乗務員に声を掛け、これにより野草の種は、バリ島からブラジルまでなんと世界中にばら撒かれることになった。
「決してあきらめることをしたくない、夢をいつまでも追い続けたい。それは誰にも止められないことだよね。」これが最期の言葉となってしまったブレンドン君。彼が人生を閉じる瞬間にも、彼の善意は無数の命を助けていることをきっと分かっていたのであろう。
ブレンドン君の祖母のパトリシア・マクモロウさんは、「ブレンドンは自分の最後の望みが、このように美しい世の中の反応となって自分に戻ってきたことを、とても嬉しく受け止めていました。彼の命には大きな意味があったことをかみしめながら、安らかに最期を迎えることができました」と涙で語った。
「彼はたったの11歳なのに、大きな伝説を私たちの心に残して逝きました。普通の人が同じ望みを叶えようとしても、これほど大きな動きにはならなかったはずです。この子の親であることを本当に光栄に思います。こんな良い子にはもう二度と出会えないでしょう。」と涙声で、しかし力強く息子を讃えた。
尚、KOMO局はブレンドン君を弔問したいという人々に対し、「一般の弔問客は入れません。どうか赤いバラとカードを送るに留めてください」とし、葬儀場のアドレスだけを示した。また、「ワシントン・ミューチュアル・バンク」各支店が窓口となり、ブレンドン・フォスター君にちなんだガン撲滅のための基金が設立されることを報じた。
(編集部 Joy横手)
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