総裁選の影に隠れてしまったが、75歳以上のお年寄りに1割の医療費負担を求める「後期高齢者医療制度」が施行されて、まもなく半年を迎える。厚生労働省はこれを「長寿医療制度」と名づけ、「長年、社会に貢献してこられた方々の医療費をみんなで支える、長寿を国民皆が喜ぶことができる仕組み」とうたっている。しかし、現実は多くの高齢者の家計を圧迫するものとして、批判の声が多い。
そんな中、東京のある自治体が、全国に先駆けて75歳以上の町民の医療費を全額無料にすると発表した。高齢者にとっては願ってもない話だが、全国の自治体が財政難に陥っている中で、そうした事が本当に実現できるのだろうか?老後を見越して、移住する価値アリ?ナシ? 徹底検証してみた。
新宿から電車とバスを乗り継いでおよそ1時間半。秩父多摩甲斐国立公園の表玄関口に位置するのが、今回、後期高齢者の医療費全額無料を発表した、東京・日の出町だ。
「東京都西多摩郡日の出町」といっても、聞き慣れない人もいるだろう。都心からの距離は50キロで、鎌倉や成田とほぼ同じだ。人口は1万6千人ほどで、奥多摩の大自然が満喫できるのどかな町だ。
そもそも、なぜ後期高齢者の医療費負担の無料化を打ち出したのか。その経緯を尋ねるべく日の出町の広報課に取材すると、意外な返答が返ってきた。「実は、まだ公式に発表できないのです…」
広報担当によると、今回の話のきっかけは、今月15日の敬老福祉大会の席上で、町長が「無料化したい」と意気込みを語ったことだそうだ。これを大手新聞各社が17日付の朝刊で一斉に報じたもので、毎日新聞によれば、必要な予算は、廃棄物処分場受け入れによる地域振興費、大型店舗出店による固定資産税収入をたよりにめどがつきそうだ、とのことだが、実情は半ばトップダウンのようにして始動したのだ。12月に議会へ上程し、可決されれば来年4月からの施行となるということで、プロジェクトは動き出したばかりだ。
とはいえ、実現の可能性は決して低くない。イオンショッピングモールの出店による固定資産税はおよそ3億円が見込めるとされる。また、日の出市は少子化対策の一環として、すでに0歳児から15歳までの子どもの医療費はおととしから完全無料化されている。
では、日の出町に移住することはアリなのか。老後を考えると、少しでも福祉の充実した地域で余生を過ごしたいというのが自然だ。日の出町はどのような町なのか。
前述の通り、日の出町に鉄道は走っていない。最寄りのJR青梅線・福生駅からバスというルートが唯一の公共交通機関だ。ちなみに日の出町出身の有名人に、元パイレーツのタレント・西本はるかさんがいるが、彼女も市のホームページ上に掲載されたインタビューで「電車の本数が少ない」と嘆いている。ただし、2002年に圏央道・日の出インターチェンジが完成し、車の便は良くなった。
そして、何と言っても日の出町の魅力は大自然だ。竹の子堀から釣り、キャンプまで、アウトドアの聖地・奥多摩に属し、東京都民でありながら、田舎のスローライフを満喫できる。
しかも、余生を過ごすだけの町ではない。日の出町では少子化対策に力を入れており、小中学生の子どもがいる世帯に一人1万円のクーポン券を支給したり、子どもの防犯対策に力を入れたりと、町ぐるみで子どもを育てる環境が整っている。
JRに出れば、中央線と直結しているので、立川・新宿方面への通勤通学も決して大変ではない。都会の喧騒に嫌気のさしている人たちは、これを機に一家で日の出に移住してみてはいかがか。人生の新たな「日の出」が待ち受けているかもしれない。
東京都西多摩郡日の出町
http://www.town.hinode.tokyo.jp/
日の出町観光協会
http://www.hinode-k.jp/index.html
(編集部 鈴木亮介)
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